21.朝霧の呪い

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「水蒸気じゃなくて煙っぽい話だな」  サリエラートゥが口を動かした。膝の上で顎がもごもごする感触がなんとも気持ち悪い―― 「――ってそうか、煙!?」  閃きの勢いで、顎のことがどうでもよくなっていた。 「煙は水蒸気より分子が小さくて軽いから、動きがふわふわにもなる! 植物を焚いた煙――吸えば幻覚を見る、そんな種類があるってなんかのドキュメンタリーで観た!」 「う、うん?」  吃驚したのか、サリエラートゥは身を引いた。 (幻覚を使っておびき寄せたのか、藍谷英)  しかし煙を使うには集落にかなり近付く必要がある。そこまでしたのならいっそ直接攻め込めばいいのではないか? 少ない武力で手間を多くかけたいのか? 何故?  ――わけがわからん!  久也は己の黒髪をぐしゃぐしゃに引っ掻き回した。 「だぁ、くそ! これだけわかっても対策は十分に立てられない。居なくなった人たちを捜しに行かないと!」 「同感だ。早速戦士たちと相談してみる」  適当な上着を羽織り、巫女姫が立ち上がった。  その左手を、久也はがっしり掴んだ。 「どうした?」  驚いた表情でサリエラートゥが振り返る。 「俺は一つ、どうしても試してみたいことがある。前から思ってたけど、今こそそれが必要だと実感してる。方法がありそうなら教えて欲しい」 「なんなんだ。改まって」  久也は一度深呼吸をしてからまた滝神の巫女姫サリエラートゥと目を合わせた。 「滝神と、対話してみたい」
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