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「それは多分、建物だよ。開いたり閉まったりする四角は扉」
「そうなのか! それで見入ってたら人が扉を通った。その人は……そうだな、ちょうどヒサヤみたいな黒くて真っ直ぐな髪をしていた。黒い服を着ていて、こう、首の周りに長い布を巻いていた。顔に四角が二つあったぞ! 手にも四角い荷物を持っていた。なんだか、四角っぽい光景だったな」
アァリージャはジェスチャーも交えて説明した。
「スーツ・ネクタイ・眼鏡とアタッシュケースのことかな……」
既存の常識をここまで超越する発想力が、アァリージャにあるとは思えない。
なのに彼が描写しているのは現代の地球に類似した世界の風景だ。
これらが何を意味するのか、悔しいが全くわからない。
「……こうなったら、早く帰ろうよ。サリーにも報告したいし」
拓真の提案に異を唱える者は居なかった。
皆は集落に向けて一斉に走り出した。左右の景色が目まぐるしく流れてゆく。
(おれの頭じゃ何が起こってるのかわかんないや)
早く戻って久也に相談しよう、そう思えば思うほどに走る速度を上げた。
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