25.狭間の苦悩

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「それはおそらくデマ――っていうか、勘違いなんだと思う」 「そうなの!?」 「民が望んで滝神が承諾する、その公式が真実なら、滝神の罰でその巫女姫が死んだとは考えられない」 「じゃあお姫様も望んでたってこと? 自殺?」 「さあな。界渡りを逃した責任を取っての行動なら、サリエラートゥが同じ選択をするのも考えうる。それとは全く別に、他部族の呪いがかかったってのも可能性がある。ああいや……もっと大穴で、民が望んだとも」  久也は次々と仮説を紡いだ。 「とにかく、滝神の祟りとかじゃないはずだ。そのリスクを背負うだけの覚悟があるのか、アイツに訊いてみろ。コストベネフィットで計れば、お前が赴くべきなのは明白だと思うけどな」 「久也の言ってること半分もわかんないけど、わかった、サリーに訊いてみるね」  それから手早く着替え、「おやすみ! 早く全快してね!」と言い残してから、拓真は我が家を飛び出した。
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