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ここからは天井が随分と高くなっているようだ。目測、十メートル以上。もしかしたら元々あった洞窟にトンネルが繋がっただけなのかもしれない。
天井の曲線をなぞって視線を地に落とした。
(な!?)
驚愕した。
列になって、人と思しきモノが全裸で横たわっている。老若男女さまざまな人間が十人だ。
信じられなくて何度も瞬いたが、瞼の裏に焼き付く像は変化しない。変化しない、つまり、誰一人として微動だにしていないのだ。それが意味するところはそう難しくない。
「死、死んでいるのか?」
「眠っているだけとも――」
戦士たちが戦々恐々と歩み出る。ある者は呼吸を確かめ、ある者は脈を探し求める。結果は芳しくないようだった。誰もが頭を振り、吐き気と戦っている。
拓真は押し黙った。頭の奥から沸き起こる怒りを表す言葉が見つからないからだ。
口の中に、戻りかけている胃液の酸味が広がる。
「待て! この者はまだ息があるぞ!」
松明を片手に、戦士の一人が皆を呼ばわった。
すかさず拓真は駆け寄った。戦士の名は確かナマユニ、アァリージャの酒飲み仲間で耳の大きい男だ。どうやら自慢の耳で微かな呼吸音を拾ったらしい。
彼が抱き起こしている小さな身体を凝視した。
まだ年端もいかない、ほんの少女である。
「どうしてこんなっ」
拓真の叫び声は地鳴りによってかき消された。
何もかもが振動している。
(なにこれ。地震!?)
あちこちで喚声が上がっている。
やがて揺れに耐えきれず、前のめりに倒れた。
後頭部に衝撃が走る。
そうして世界は暗転した。
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