04.組み立て式

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 松明に照らされた傷口は既にくっついた(?)皮膚の繋ぎ目と、繋ぎきれていない隙間が交互に確認できる。当人は興味深々にそれを見下ろしているが、何もコメントしない。  「大丈夫だ」と再度サリエラートゥが肯定したので、三人は席を立った。 「結局、祭壇がどういうトコなのかよく見えなかったね、暗くて」 「これからじっくり見る機会はいくらでもあろう。それより時間が惜しいから出るぞ」  巫女姫が灯りを持ってサッサと先を歩く。二人は慌ててその後ろについて行った。 「もたもたしていると午後が夕方に差し掛かる」 「……うわっ! さっき曇ってたのに、眩しいじゃん」  洞窟の入り口は滝の後ろにあるらしく、明るみに出たと同時に水飛沫が顔にかかった。拓真と久也は反射的に顔の前に手をかざした。  外の空気は洞窟の中よりも暖かい。周囲には常夏の国らしく濡れた植物の匂いが漂っている。  水を被らなくて済むよう、サリエラートゥが左の脇道を進むように指示する。さっきも洞窟に入ってきた、胸板の分厚い男性二人がそこで待っていた。二人は無言無表情で合流し、一同の最後尾に加わる。 「さて、洞窟から出ても、私が神力を使えば言葉は通じる。神力は貴重なので使いすぎるのはよくない。しかし今日は例外としよう」 「ありがとサリー。超助かる」  拓真はサリエラートゥをじっと注視してみた。 (神力を使うと言っても身体が光るとか目の色が変わるとか髪が逆立つとか、わかりやすいサインが無いんだね)  ハイポニーテールを揺らして振り返る巫女姫の様子は至って平然だ。これでは、話が通じない時も話してみないことにはわかりようが無いだろう。  河を背に、歩き出した。前方の景色は緑ばかりだが、ずっとまっすぐ歩き続けた先に台地があるのが遠目に見える。台地は周りよりも少し濃い緑色で、横に潰されたみたいなパームツリーなどが生えている。 「参考までに、アンタらの言語はなんて言うんだ」 「言語の名は、マクンヌトゥバだ」 「マ…………なんだって?」  久也が口元をひくつかせた。 「マクンヌトゥバ」 「マニトバと言ったらカナダの州のひとつだよ~、って違うか」  拓真にはマニトバに聴こえたのに、そうではないらしい。サリエラートゥが不服そうに眉尻を吊り上げる。
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