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子供たちがと次々と呼ぶのですぐにタクマとヒサヤもこちらに注目した。
何故かサリエラートゥの背に隠れてしまったユマロンガが小刻みに震えている。
「やっほー、サリー!」先にタクマが立ち上がった。「――と、えーと……ユマちゃん?」
覗き込むようにタクマが首を伸ばした。濡れた髪から滴が滴っている。乾いていると薄茶色で濡れるともう少し濃い茶色になるのか面白いな、などとサリエラートゥが発見していると――
「やだ! 前見えてるし! 隠しなさいよ!」
ユマロンガはそう叫んで走り出していた。
「おーい! 水汲まなくていいのか!」
サリエラートゥは置き去りにされた桶を拾って呼びかけたが、応答は無かった。
「なんて言ったの、彼女? おれなんかした……?」
やたら沈んだ声に振り向いた。
まるでしおれた花みたいだ、かわいそうに。深く考えずにサリエラートゥは手を伸ばし、タクマの濡れた頭を撫でてやった。
「すまん。私の考えが浅かったようだ。嫌われているわけではないと思うぞ」
「だといいけど、もう二度目だよーあの反応」
「彼女もお前も性根のいい子だからきっと仲良くなれるさ」
「え、ホント!? サリーおれのこといい子だと思う!?」
「勿論だ」
知り合って一日足らずだがなんとなく自信を持ってそう答えた。タクマは心底嬉しそうに微笑んでいる。
その背中を、ヒサヤの辛辣な突っ込みが打った。
「絶っ対、お前が考えなしに立ち上がったからだろ。ほら、周りの奥様方も『ぶら下げたモン隠そうとしないなんて、なんて非常識な白人ザマス』みたいな顔してるぞ。羽伸ばしすぎ」
鋭い。
いや、普通に気付くべきことなのか? タクマがどこか抜けているのだろう。
こちらとて、男根なんて生贄を整える一環で笑えないほどの数を見てきたので、感覚が鈍くなっている。
口を尖らせて抗議するタクマを、サリエラートゥは微笑ましい気持ちで見守っていた。
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