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サリエラートゥの言葉は神力でよくわかるが、男の方は少ししか聞き取れない。久也は隣の親友に耳打ちした。
「最初と最後、あいつがなんて言ったかわかったか?」
「んーと、神さまの為だとか、これからも頑張るとか、そんな感じだったと思う」
「なるほど。お前の耳があると助かるな」
褒められて、へへー、と拓真が嬉しそうに頬をかく。
「でも挑戦者が負けたのザンネンだったなー」
「肩入れしてるな」
「だって覇者が倒れる瞬間ってなんか見たいじゃん。勝てなそうなのに挑む人がかっこいいじゃん」
「まあ、そうだな」
「っていうかさ、あの勝った方さ、某ハワイ出身の俳優さんにちょっと似てない? ほら、最近じゃあ蛮族のコナンとか演じた」
「ジェイソン・モ○ア?」
「そうそう! その人」
久也は今一度、うら若き女性の前で跪く筋肉男を眺めてみた。
すると確かに顔立ちや体格やドレッドロックスの長髪などに某俳優と通ずるものがあった。ただひとつ、肌がハワイ出身の人よりも遥かに濃い赤銅色である。
とりあえず敵に回したくない人物であるのは決定的だ。
「さあ、宴の余興はここまで! 皆の者、飲んで食べて踊るがいい!」
「はいよ、姫さまー!」
巫女姫は満面に笑顔を浮かべ、両手を広げて言った。それを合図に、民は輪を崩してそれぞれくつろげる席に戻った。間もなくして誰かの歌声が響き出した。
大男を三人引き連れて、サリエラートゥも席に戻る。宴であるだけに彼女は今日は髪飾りやアクセサリーをたっぷり身に着けてめかし込んでいる。服はパームの藁を細かく編み込んだチュニックとスカート。チュニックの腹回りは藁にさまざまな形のビーズを通した鮮やかなデザインになっており、隙間から滑らかそうな肌が垣間見えて、妙にそそる。思わず目を泳がせた。
「タクマ、ヒサヤ。お前たちに紹介しよう」
サリエラートゥが男の一人を隣に立たせた。二メートルありそうな身長の大男がこくりと頷く。先程のレスリングで勝利を収めた王者だ。
「我が集落の戦士たちを率いる、アレバロロだ。見た目はこうだが、思いやりがあって堅実な男だぞ」
「よろしくー!」
人懐っこい笑みを浮かべて、拓真が戦士に握手を求めた。腕を組んでいたアレバロロは一瞬差し出された手を見下ろし、すぐに右手で応じた。分厚い腕に合った分厚い掌だ。
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