09.うきうき遠足にカフェラテ

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 あちこちが痛くて頭がぐわんぐわんしているのに、水に濡れて感覚は麻痺していく。 「あーっはっはっははは!」  笑いが波となって体中を指先まで流れていった。隣のアァリージャも爆笑している。  がっしり肩を抱かれ、二人して立ち上がった。笑いが全然止まらない。もう何が可笑しかったのか思い出せないくらいに笑って、それでもまだ全身を痙攣させた。  この人とは仲良くなれそうな気がする。 「楽しそうだな」  肩を抱き合ったままほか四人の元に戻ると、石に腰をかけて足を伸ばしているサリエラートゥが微笑みかけて迎えてくれた。アレバロロとアッカンモディは黙々と石を運び集めていた。つまり座席を確保している。 「楽しいよ!」 「拓真、ふくらはぎスゲー蛭がくっついてるくっついてる」  久也は呆れ笑いをしながら額を押さえている。  目線を下ろすと、確かに黒い小さな生き物が何匹も脚に吸い付いていた。 「わあ超キモい」  石に腰をかけ、アァリージャともども蛭を引き剥がす作業に入る。指の間にぐにゃっとした感触を捉えながら、何故か「ごめんね」と一匹ずつに丁寧に謝って引っ張った。  いつしかふくらはぎが血だらけになっている。足の裏も少し切れている。それを、親友が睨むように見ていた。 「どしたの久也」 「……化膿しそうだなと思って」 「えー、一つ一つは傷口小さいんだし大丈夫じゃない」 「まあお前が気にしないなら俺も気にしない。デコのたんこぶもな」  久也は自分の額を指差した。それを見て拓真も自分の額を触ってみる。さっき木にぶつけた箇所がこぶと化して敏感になっている。  気にするほどではないと判断して、拓真はにかっと笑った。 「うん、ほっときゃ治るでしょ」  全員が座席を選んで落ち着くと、今度は持参してきた水筒の水を少量使って手を洗い、籠から食べ物を出して分け合った。  バナナの葉を開くことにはまるで誕生日プレゼントを開けるのと同じわくわくがあって、妙に得した気分である。  六人は雑談を交えながら食事した。 (おいしー。汁が辛いけど、この舌の痺れに耐えながら食べる新鮮な魚がまたイイ。ユマちゃんさまさま)  掌サイズのナマズみたいな魚を頭部から尻尾まで残らず食らい尽くす。
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