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たまに見る朝霧久也のこの笑顔は、勉強を教えてもらっている時にこちらの飲み込みや受け答えが良かった時に出る。誇らしげだったり満足げな感じである。
突然、戦士の三兄弟が何かに気付いたように警戒の糸を張り巡らせた。
「姫さま! 後ろに」
アレバロロたちがサッと巫女姫の前に立った。すぐ近くの茂みの向こうを、まるで獲物を狩る猛獣のような、落ち着いていながらも意識を最大限に解き放った状態の双眸で見据えた。
長男が何かを低い声で呟いた。
「アレバロロなら今『どうやら北の部族です。殺意は無いようですが』と言ったぞ」
サリエラートゥが小声で通訳する。
間もなくして草が掻き分けられた。
姿を現したのは腰布のみを纏った成人男性が五人。体中に派手なピアスをつけていて、特に鼻輪が印象的だ。肩までの長さの黒髪を細かい三つ網に結んで垂らし、ビーズや鳥の羽で彩っている。
ちちちちち、と男たちは舌を鳴らして音を立てている。
姿勢や目線から察するに、こちらを馬鹿にした雰囲気である。
サリーの眉が釣り上がった。
瞬間、双方のグループの間に緊張感が張り詰めたようだった――
が、あることに気が付いた拓真は堪えきれずに口を開いた。
「ねえ久也! 滝クニの人が肌がちょっぴり濃い目のミルクチョコレートなら、この人たちはカフェラテって感じだね!」
場にそぐわない明るい声に驚いたのか、それとも耳に慣れない言語だからなのか、招かれざる客たちが身構えた。リーダーと思しき一人が弓矢に手を付ける。
声を出したらまた彼らが驚くとわかっているからか、久也は答えないように我慢しているようだった。それも数秒後には折れて叫んだ。
「――――シャレてて美味そうなたとえだな!」
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