13.もちをつけ

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 仕方がないので思い出してくれるまで雑談をした。と言っても早口が聴き取れない。いちいち問い質しても悪いので拓真は適当に頷きながら相槌を打つ。  突然、アァリージャが目をかっ開いた。 「そうだ! 塩沼の方で誰かがまた北の部族と鉢合わせたらしい」 「北と?」  拓真は露骨に驚いて聞き返した。 「北の部族の長がお前たちの噂を聞いて会いたがっているとな。それ以上はわからん。じゃ、兄者たちの家で待っているぞ!」  颯爽と走り去る背中を見送ってから、拓真が口を開いた。  いつの間にやら久也は眉根をぎゅっと寄せている。 「今の聴こえた、久也?」 「北の長がどうとか」 「うん。なんかおれらに会いたがってるって」 「会ってどうすんだよ」 「どうするんだろうね」 「いきなり檻に閉じ込めて観察したいとかだったらお断りだ」 「相も変わらず発想がダークだね!」  別に連れ去るとかじゃなくてちゃんと会いたいってんなら行っても良いんじゃないかな、くらいにしか拓真は考えていなかった。そこで久也のネガティブ思考に触れて、何故かたいへんユカイな気分になったのだった。
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