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「だ、だってさ、いくら水の中に入らない原則だからって今日みたいな事故はありうるわけじゃん! 雨季だからあちこち氾濫したり洪水に遭うだろうし。足を滑らせる人とか、洪水で家が潰れちゃった時とか、どうすんの!?」
んー、とサリエラートゥが顎に人差し指を当てる。
「滝神さまに祈るしかないな。まあ年に何度かあることだし、仕方ない。運が尽きたということだ」
「そうデスカー……」
落胆し、拓真は濡れた泥っぽい地面に両手両膝をついた。
ちょっとかっこよく言えばヴィルヘルム・レームブルック作「くずおれる男」と同じポーズだ。つまり「orz」の形である。
水泳講座でも始めれば、自分がこの世界にできる貢献への第一歩となるかもしれない。
(でも需要なさそー)
これが価値観の違いかぁ、と拓真は深いため息をついた。
(人魚って本当に居るのかな)
恐るべし異世界、されど異世界。
早く久也にこのエピソードを語らねば、と拓真はもう一度ため息をつくのだった。
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