16.不幸に連なる解答

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「この世界は無駄が多すぎるんだよ。毎食あんな大量に食べる必要ないだろ。限度ってもんがある。腹八分の心得を伝えてやりたい」 「あっははは、未来の心配とかしちゃってさー。住み付いちゃう気あるんじゃん。ちょくちょくアドバイスしてあげればいーよ」  はあ、と大げさなため息をついて久也は頬杖の姿勢に戻った。 「劇的に環境が変わったからって、本人までいきなり劇的に変われるとは限らない。結局どんな世界に行こうと俺達は俺達のままだ。ただの元大学生だ」 「新世界でヒーローになろうとしたって一朝一夕じゃなれないって話だね!」 「いっやあああ、それはどうだか。お前ならなれそうだけど」 「まためんどくさくなって適当なコト言ってない?」 「マジだって」  何故か久也はニヤニヤ笑っているが、その理由までは拓真には見えない。  頭からはてなマークを飛ばしている間に話題が変わった。 「で、北の部族の長の方は、何か収穫あったか?」 「あ。あったよそういえば」  アレバロロに聞いた情報を思い起こして答えた。 「今の長は九?十年前に先代と入れ替わったらしいんだよ。でも向こうは滝神の巫女姫みたいな『適性』システムじゃなくて血筋で選ばれるはずだから、どうやって替わったのかまではわからないって。北の民を何人かとっ捕まえて問い詰めても毎回答えがバラバラではっきりしないんだって」 「十年前……? なんか引っかかるな」 「代替わりした後は北の周辺の部族を統一して支配下に置いた……それから、バローは長が『異人』かもしれないって言ってたよ」 「は?」  滝神さまの御座す郷にとっての異人とは、北・東・南周辺の部族のいずれかに所属していない、全く異種の外見をした人間を指す。ちなみに西には人間が確認されていない。ずっと進んだ先に海があると噂されているらしいが、見て帰ってきた人はいない。  つまり、滝クニでは異人は一貫して界渡りと同義でなければならないのである。 「それは色々おかしい」  脳内で情報整理をしているのか、久也の視線は浮遊し出した。 「うん。北の部族が住んでる地域よりもっと北から現れたとか、そういうのはありうるみたい」 「正統な血筋を押しのけて長になった異人が、周辺の部族を統一した……? 地球の歴史にもあった気がするけど、それでよく民が文句言わないな」 「恐怖政治じゃないなら、なんかメリットがあったのかな」
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