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「おれあんま知らないけど、クラーレとかはどう? 南アメリカの原住民が矢に塗るメジャーな奴じゃん」
「いい線行ってる」
「食べても毒性は無いし肉の味も変わらないんでしょ」
「ああ。もしクラーレに近い毒だとすると、酸素量さえ保てれば本当に自然に助かる可能性がある」
「でも、一体いつまでやってればいいの?」
拓真の視線が流れた先を、久也も一緒になって辿った。人工呼吸は何度も交替しながら尚も続いている。
「決まってる、回復するまでだ。その辺は神力が未知の効果を出してくれることに期待大だな」
「任せろ」
と、巫女姫が頼もしく頷いた。
新たな希望に安心した所で、久也も交替制に加わった。言いだしっぺの自分が高みの見物という訳には行かない。
次に集落の民と交替した後、また物思いに耽った。
問題は藍谷英が「後日戻る」と言い残してあっさり場を引き下がった理由だ。疲れていると言ったのが事実か、気まぐれか。向こうが明らかに優勢だったのだから、ついでに何人か人柱用に攫って行けば良かったのに。
(例の「人柱」には、今日この場に集まっている十五人ほどの人間では満たせない、別の条件があった……?)
わからない物はわからないままに、ただとてつもなく嫌な予感がした。
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