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人見知りじゃなくて良かった、と拓真は内心で思った。社交的に生きるのは霊長類の本質だ。どんな状況だろうと他人との関わりを拒むことはできない。
たとえたった一人で生きていくことが可能だったとしても、長い間全く誰とも会わないのはストレスとなりえる。
「英兄ちゃんは独りでどんな気持ちだったんだろうね」
久也からの返答は無かった。熱で答えるのも億劫になったのだろうか、それとも寝てしまったのだろうか。構わずに話を続けた。
「世界の境界を越えた時に人格が歪んだのかな。それとも状況に耐えられなくなって変質したのかもわかんないけど……」
話し合いたい気持ちは勿論ある。彼の身に何が起きたのか、自分たちは知らなければならない。結果、分かり合えるならそれに越したことは無い。
しかし敵対しているのも確かだ。集落の――今の生活や仲間たちの敵であり、拓真にとっても敵だ。
過去はどうだったとしても、そこを譲るわけには行かない。
「もしも北の人たちと戦になったらさ、おれ戦うよ」
見つめた両の拳をぎゅっと握る。
「ああ」
一大決心を親友に伝えたら、全く驚いていなさそうな声が返ってきた。思っていた通り、とっくに気付いていたらしい。
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