episode181 アドニスと王様

9/29
前へ
/30ページ
次へ
「嘘ばっかり……」 「いたさ」 「いないよ……」 涙声で吐き捨てながらも あるいはそれは本当なのかもしれないと思った。 僕が見ていた 亡霊も幻も――。 「征司お兄様……」 「何だよ?」 みんなリアルな この人の分身にすぎなかったのかもしれないと。 「俺が傍にいなきゃ今頃おまえ――」 しがみつこうとする 僕の手をすり抜けて舌打ちする。 次の瞬間。 「バァンだ」 征司は突然 唇を掠めるほど近づくと 僕の額を弾いて笑った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加