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「嘘ばっかり……」
「いたさ」
「いないよ……」
涙声で吐き捨てながらも
あるいはそれは本当なのかもしれないと思った。
僕が見ていた
亡霊も幻も――。
「征司お兄様……」
「何だよ?」
みんなリアルな
この人の分身にすぎなかったのかもしれないと。
「俺が傍にいなきゃ今頃おまえ――」
しがみつこうとする
僕の手をすり抜けて舌打ちする。
次の瞬間。
「バァンだ」
征司は突然
唇を掠めるほど近づくと
僕の額を弾いて笑った。
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