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「残念。はずれだよ」
僕はベッドの中に身を沈め
ひとりごちる。
あれはナルキッソスじゃない。
咲いているのは水仙ではなくアネモネ。
あれは美少年アドニスの絵だ。
無名の画家の描いた
僕にそっくりな美少年アドニス。
征司は僕と初めて関係を持った後
どこかからあの絵を仕入れてきた。
「それ、いくらでしたの?」
僕が尋ねると
「ただ同然さ」
意地悪く笑って。
それからずっと
ベッドルームの片隅に飾られていた。
皮肉にも
愛の女神アフロディーテに溺愛され
命を落とすことになるアドニスの絵。
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