episode181 アドニスと王様

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ぐんにゃりと脱力した僕を抱え 螺旋階段を回ってここへ辿りつく頃には――。 もうどうしたって 瞼を開く力は残っていなくて。 「せ……いじ……お兄様……」 かすかに 唇を掠めたのが 征司の唇だったのか。 それとも――。 単に呼吸を確かめるための 指先だったのかすら定かじゃない。 ただ征司は僕の傍にいた。 それだけが事実で それが一番大事なことだった。
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