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「夢じゃない……」
脱げかけのローブを手繰り寄せ
僕は一目散ベランダへ飛び出した。
ベランダの柵から身を乗り出せば雨の中。
ガラスの取り換え作業が行われているのが見えた。
――やっぱり夢じゃない。
僕はよりはっきり
先刻のことを思い出そうと。
柵からぎりぎりまで身を乗り出した。
「征司お兄様……」
降り続く灰色の雨に打たれ
すぐにずぶ濡れになる。
まだ薬の作用でふらつく身体。
足元を滑らせれば
割れたガラスの山に真っ逆さまだ。
思った瞬間。
悪魔が手を引いた。
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