episode181 アドニスと王様

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「夢じゃない……」 脱げかけのローブを手繰り寄せ 僕は一目散ベランダへ飛び出した。 ベランダの柵から身を乗り出せば雨の中。 ガラスの取り換え作業が行われているのが見えた。 ――やっぱり夢じゃない。 僕はよりはっきり 先刻のことを思い出そうと。 柵からぎりぎりまで身を乗り出した。 「征司お兄様……」 降り続く灰色の雨に打たれ すぐにずぶ濡れになる。 まだ薬の作用でふらつく身体。 足元を滑らせれば 割れたガラスの山に真っ逆さまだ。 思った瞬間。 悪魔が手を引いた。
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