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春の訪れを感じさせる三月上旬。
俺は病院のベッドに横になる彼女の顔を見つめていた。
透き通るような白い肌は昔と何も変わっていない。
しかし、彼女自身は昔とどれだけ変わってしまったのか。
昔から身体の弱かった彼女。
そのせいか入院したことが今まで何度あっただろう。
だが、命の危険は無かった、なかった、はずだ。
突然の余命宣告。
彼女がまた入院し、またすぐに帰ってくると信じていた。
その時は確かにすぐ帰ってきた。
そして彼女から直接聞かされた、自分の寿命について。
今日まで彼女の親から何も聞かされなかったのは優しさか?
俺が知らないだろうと思っているのは明白だった。
その顔は悲しみで歪んでいた。
その親も今はいない。
親だけでなく、今、彼女のそばには俺しかいない。
何故、俺なのだろうか。
こんな時は、親がいてやるべきだろう、俺などではなく。
一緒に居てやってくれ、そう言われた。
貴方達だって一緒に居たいだろう。
その言葉は口にできず、喉に引っかかっていた。
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