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彼女は目を覚まさない。
痩せこけ、死人よりも死人らしく見える。
だが、そんな彼女が俺には誰よりも美しく見えた。
初めて会ったのは何時だっただろうか。
覚えていない、だが、六つの時には隣に居た。
写真が残っているし、そうなんだろう。
ランドセルを背負い、二人で並んで立っていた。
はにかむ写真の中の彼女は可愛かった。
俺はなぜかむすっとしていた。
点滴の音が耳に付く。
彼女はまだ目覚めない。
彼女と一緒に出掛けたこともあった。
確か、九つの時だ。
うちの親と向こうの親、それに俺らで海に行った。
あの時彼女は長袖シャツに長ズボンだった。
海にも入ろうとしなかった。
お肌に悪いから、と言っていた気がする。
何故海に来たのかが分からなかった。
窓を開けようか。
空気の入れ替えは大事だろうから。
勝手にしたら怒られるかもしれないが。
俺らは揃って同じ中学に進学した。
俺はバスケ部に入った。
彼女は何の部活もやらなかった。
理由を聞くと、自分は身体が弱いから、と返ってきた。
だからバスケ部には入れないよ、と続いた。
俺は、バスケしか選択肢が無いのか、と大笑いした。
そうだね、と彼女も笑っていた。
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