第1章

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涙が出てきた、鼻水も出てきた。  何故だろうか、花粉症は患っていないはずなのに。  高校の入学式、彼女は泣いていた。  卒業式ではなく、入学式で泣いていた。  聞けば、ここまで生きてこれたことが嬉しかったらしい。  俺には分からない話だった。  ずっと一緒に居るものだと思っていたから。  そして今、俺たちは病院にいる。  彼女はベッドに横たわり、俺は泣いている。  まだ、いや、今も一緒にいる。  突然、彼女が目覚めた。  驚いた。もう目覚めないと聞いていた。  泣いているのを見られるのは少し恥ずかしかった。  彼女の目が見えているのか分からないが、恥ずかしかった。  こちらに目を向ける彼女。  何かを言おうとしているのは見て分かる。  だが、既に口を動かすのも難しいらしい。  無理をしなくていいと言いたかった。  でも、言えなかった。   しきりに何かを伝えようとする彼女。  痛ましかった、見ているこちらが辛かった。  だが、止める気にはならなかった。  
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