第1章

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「………ら……ね……。」  聞こえた、確かに聞こえた。  彼女の声だ、間違いようもない。  聞こえていないと思っているのか、彼女は繰り返す。  「……な………かな……い……で……。」  泣かないで、だそうだ。  無理、無理だ。  「……わ、た……し………は……ず、と………ま…てる……か、ら…ね…。」   そう言い残して微笑む彼女。  また、目を閉じた。  ピー、という音、一直線のグラフ。  泣きやむなど出来なかった。  彼女の火葬から数日、ようやく落ち着いてきた。  火葬の時は泣かなかった、泣けなかった。  わたしはずっとまってるからね、か。  どうやら彼女はヤンデレの気質があったらしい。  そして俺はどうやら今後結婚できないらしい。  待ってくれている彼女を裏切れはしない。  そんな馬鹿野郎だ、俺は。  春一番が吹いている。  彼女を乗せて飛んでいく。
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