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「………ら……ね……。」
聞こえた、確かに聞こえた。
彼女の声だ、間違いようもない。
聞こえていないと思っているのか、彼女は繰り返す。
「……な………かな……い……で……。」
泣かないで、だそうだ。
無理、無理だ。
「……わ、た……し………は……ず、と………ま…てる……か、ら…ね…。」
そう言い残して微笑む彼女。
また、目を閉じた。
ピー、という音、一直線のグラフ。
泣きやむなど出来なかった。
彼女の火葬から数日、ようやく落ち着いてきた。
火葬の時は泣かなかった、泣けなかった。
わたしはずっとまってるからね、か。
どうやら彼女はヤンデレの気質があったらしい。
そして俺はどうやら今後結婚できないらしい。
待ってくれている彼女を裏切れはしない。
そんな馬鹿野郎だ、俺は。
春一番が吹いている。
彼女を乗せて飛んでいく。
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