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それはさておき、真一さんは眼鏡が大好きなわけじゃない。
楓が眼鏡を踏んで壊したから、先週新しい眼鏡を買いに行って選ぶためにいろいろ掛けていただけ。
その新しい眼鏡は、ちょっと早めの誕生日とバレンタインを兼ねて私からのプレゼントになったのだ。
それにしたって、眼鏡って。
ふふっと笑いながら楓を見ていると、描き終わったのかデコペンをぽいっと机に置く。
「かえ、パパ起こしてくる!」
「はーい、いってらっしゃい」
もう11時近いから、起こしたっていいはず……と駆け出していく楓を特に止めもせずに送り出した。
コポコポと音を立ててコーヒーメーカーがコーヒーが入ったことを知らせる音に交じって、真一さんと楓がじゃれ合ってる声が微かに聞こえてくる。
楓のホットミルクと、私のカフェオレ、そして真一さんのブラックコーヒーにそれぞれ楓の力作のオブラートをそっと乗せていると、真一さんの足音と一緒に楓の楽しそうな声がだんだん大きくなってきた。
カチャッとドアの音に視線を向けると、楓を肩車している真一さん。
先週買ったばかりの眼鏡は楓ががっちりと握っていた。
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