第1章

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別れ話を切り出した僕だったが彼女は泣いて拒否した。「お願いだから一緒にいて」 「ダメなところがあったなら直すから」 「あなたじゃなきゃ生きていけないの」そんな事を言う彼女だったが、僕の気持ちは変わらなかった。僕は彼女を置いて実家に帰った。去り際に泣いている彼女の口から聞こえた言葉は、今でも頭の中から離れてはくれなかった。分かれてから数日が過ぎたある日、僕の元にメールが届いた。それは彼女からのものだった。まだ僕の事を諦めてはくれないらしい。電話も何度かかかっては来た。最初のうちは無視を貫いていたが、あまりにも着信が鳴り止まないため、僕は携帯を買い替えその際に電話番号やメールアドレスなどを変更し、彼女との通信手段を一切絶った。だがたった数日のうちにどういう理由か僕の電話番号やメールアドレス、更には住所まで特定されていた。その証拠に僕の写真が何枚か送られてきた。これ以上関わりたくなかったが、ストーカー紛いの行為がエスカレートするのも耐えられなくなった為、僕は彼女の家に訪れ話をすることにした。それが間違いだった。 話し合いは平行線を辿っていた。彼女の言動や行動に耐えられなくなった僕は彼女の首を強く強く握っていた。気づいた時には彼女はもう糸の切れた人形のように動かなくなっていた。僕はその場からすぐ離れ近くの公園のトイレに入り吐いた。自分の行動にではなく、首を締められているにも関わらず彼女の発した言葉を思い出し吐いた。僕はしばらく個室にこもりこれからの事を考えていた。そんな時僕の入っている個室にノックがされた。僕は入っていますと返事を返したが、すぐに不思議に思った。ここの公園の男子トイレの個室は全部で5つあり、ノックをしたという事は他のトイレが全て使用されていることになる。そんな事を考えている僕に、恐らくドアの前にいるであろう人物が声をかけてきた。 「ずっと待ってるから。だから早く出ておいで」 その声の主に気づいた時には僕の意識は薄れていき次第に目の前が暗くなっていった。
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