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暗い毎日から抜け出したいと、ずっと思ってた。
「じゃあT-Mやってみる?いいよぉ、T-M。楽しめるよ」
友人の勧めで、ついに私は胡散臭い商品に手を出してしまう。
一般家庭に育った女子高生のお小遣いでは180万の出費は痛かったけど、そのくらいはしょうがないか。
手元に届いたT-Mを部屋に広げ、取説を雑にポケットにねじ込み、この世界から逃げ出す覚悟を胸に深呼吸をする。
そして適当にブレンドしたT-Mを、
…うわ、くらくらする。
合法なのに、犯罪者の仲間入りをした気がした。
「貴様、何者だ」
…気付けば私は知らない場所にいて、時代劇に出てくるような格好をしたおじさん達に囲まれていた。
T-Mは無事に発動したらしい。
だけど、命の危機らしい。
「その妙な格好は何だ」
「どこから現れた」
「言わぬと」
何も言えない私に業を煮やした厳ついおじさんが腰にぶら下げた物騒なものに手をかけた時、「待て」と私達の間に男性が割ってきた。
長い髪が特徴的な、自信に満ちあふれた人。
これが私と彼との出会い。
厳ついおじさん達を従えた彼は、何も話さない怪しすぎる私を自宅に招き、衣食住の全てを与えてくれた。
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