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『リミクサー』
法律の隙間をかいくぐって、過去の時代へ行ける装置。
どの時代に飛ばされるのかはT-Mのブレンド次第らしいけど、どこでも良かった。
どうせなら刺激的な時代がいいなとは思った。
ここは約150年前の日本らしい。
歴史には詳しくないけど、願い通り、動乱の時代に来てしまったのだ。
彼はこの荒れた時代で政治に携わっていた。
彼が会合で遅くなる日は、私は彼の小姓の少年と共に過ごしていた。
「先生は日本を変えようとしている凄い方なんです!あぁ、僕もいつか先生のように立派な政治家になりたいなぁ」
「キミならなれるよ」
そう言うと少年は嬉しそうに笑った。
私は、彼の名前もこの少年の名前も知っている。
歴史の教科書に載っていたのだ。
ただ勉強不足な為、名前に見覚えがあるだけで実際何をした人物なのかは知らない。
この荒れた世ならいつ彼らが死んでもおかしくないけど、それは嫌だなと…いつしかそんな感情が芽生えていた。
――事件はこの世界に来てから少し経った、寒すぎる冬の夜に起きた。
生まれて初めて雪に触れ、小姓の少年に教わりながら雪だるまというものを作っていた時、門の外で何かの気配がした。
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