30人が本棚に入れています
本棚に追加
門をそっと開けた私の目に飛び込むのは、真っ赤に染まる雪。
…彼は雪の中、血塗れで倒れていた。
私はどんな声を上げたのだろうか。
小姓の少年は彼を見ると立ち尽くす私を押しのけ、泣きながらその身体に縋りついた。
「先生っ!小泉先生!!一体何が…!民主藩の仕業ですかっ!」
「……晋三」
彼は少年の頭を撫でるとスーツの内ポケットから書状を取り出し少年に渡した。
「これは、郵政民営化の…!では、成し遂げたのですね…!」
「…ああ…我々の勝利だ。すぐにマスコミを使い、国民に通達してくれ」
少年がその場を離れて二人だけになると、身体が震えて止まらなくなる。
…こんなのを見るためにリミクサーを使ったんじゃない。
彼は私と目が合うと微笑んだ。
その目はとても優しく、「獅子」の異名を持つ彼にはとても不釣り合いに見える。
「…お前が来てから今日で丁度三ヶ月か。…間に合って良かった」
「…え?」
「帰るのだろう?未来に」
彼がポケットから出したのは、あの日使ったT-Mの取説。
…ああ、取説を解読されてしまったのか。
T-Mの効力は、三ヶ月間。
そして。
「未来…いや、異世界の未来か」
最初のコメントを投稿しよう!