第2章

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半年前、レオが大学に入って二年目の夏のことだった。付き合っていた彼女に呼び出されて、彼はある場所に出向いていた。それは初めてデートをした場所。だが土砂降りの雨にうんざりしていた彼は彼女と向かい合うとため息をついた。 『なんでこんな雨の日に?』 不満を隠しもしないレオに彼女は彼以上の大きなため息をつく。それを見たレオはさらに顔をしかめた。 『なんでか…今日が何の日かくらい覚えててくれてるかと思ったのに、レオはやっぱり忘れてるんだね』 『は?』 まるで自嘲するかのような彼女の冷めた笑いを見てレオの眉間に皺が寄る。 『一年の記念日なんて、レオにとってはどうでも良かったんだ。絶対忘れないって自分で言ったくせに…』 『あ…』 彼女の言葉にレオは視線を伏せた。何かを言おうと思うが言葉が見つからない。レオのその様子に彼女はぎゅっと唇を噛んだ。そしてバシッと音が響いた。 『いって…』 レオは彼女に殴られた頬に手を当てた。彼女はその瞳に涙を湛えている。唇を震わせる彼女にレオは何も言えなかった。
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