第2章

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『もう会わない』 彼女はそう言うと足早に彼のもとから去って行った。差しかけられていた傘がなくなりレオは雨に濡れる。容赦なく降り注ぐ雨。だがレオは動かなかった。 『いってーな』 そう呟いたレオは頬に手を当てたままだった。 二人が付き合い出したのは大学に慣れ始めた夏のある日のことだった。 一年なのにチアリーディング部で目立つ彼女から付き合って欲しいと言われたレオは笑顔でいいよと答えた。はっきりと伝えなかったが、レオも彼女のことが好きだったし、一緒にいることが幸せだった。 『一年の記念日にはまたここに来よっか』 そう言ったのはレオ。二人の時間を大事にしたい。彼は本気でそう思っていた。 だがチアリーディング部の彼女は練習に忙しく、なかなか会う時間が取れなかった。彼女のことを思って連絡も控えていた。会いたいと思えば彼女から連絡をしてくれる。レオはそう思っていたからだ。 だが大学生活に慣れればなれる程、自分の楽しい時間に心を奪われ彼女のことを思う時間は減っていく。そしてレオは今日が一年の記念日だと言うことをすっかり忘れてしまっていた。
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