8人が本棚に入れています
本棚に追加
レオが彼女と別れて一週間が過ぎた頃だった。友人から聞いたのは彼女が膝を痛めたせいでチアリーディング部をやめたということだった。
『レオ、別れて正解じゃね。チアだから付き合ってたんだろ?』
そう言われてレオは言葉に詰まった。レオは彼女のことが好きだから付き合っていたつもりだった。だが傍目から見た理由はそんな風に見えていたのだ。
なんで自分に話してくれなかったのだろう…その理由は友人の言葉で理解できた。彼女は言えなかったのだと…
チアではなくなった自分に価値はない。そんな風に思っていたのかもしれないと…
そしてしばらくして彼女が他の男と付き合いだしたと聞いた。キャンパスを二人で歩く姿を時々見かけた。彼女の新しい恋人は自分と比べると地味な感じに見えた。だが彼女の幸せそうな笑顔は自分と付き合っていた頃には見られなかったものだった。
『俺はあんな顔…させてやれなかった』
幸せそうな彼女を見ているのが辛かった彼は、大学をやめてNYに来たのだ。
分かっている。自分は逃げたのだ。彼女から…彼女を幸せにできなかったという、その事実から。
楽しければいい。そんな風に考えていた自分から…
『そうだな…俺は逃げたんだ。彼女を傷つけてたことを認めたくなくて…』
レオはそう呟くと雨の打ちつける窓をじっと見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!