第2章

5/32
前へ
/50ページ
次へ
レオが談話室を出て行った。雨が奏でる音はおさまる気配を見せない。 『そう言えば、ハヤト今日は珍しく呼び出されなかったね』 リョウタが言うとハヤトはふっと笑ってそれに答えた。 『休みの日くらいゆっくりさせろって言ってみたんだよ。任せるからってさ』 『そうなんだ』 リョウタはそう言いながら、ハヤトの顔が寂しそうに感じた。少なくともゆっくりと過ごせたことを喜んでいる表情ではない。 リョウタがじっと自分を見つめていることに気付いたのか、ハヤトが笑顔を作った。だがやはり無理をしているように見える。 『休めたのにさ、なんか落ち着かなかったよ。今まで仕事、仕事だったからかな』 苦笑いを浮かべたハヤトは立ち上って窓に近づいた。そして暗くなった外へと目を向ける。 『もっと早くこうしてたら…』 ぽつりと呟いたハヤトの瞳が少しだけ潤んでいることに誰も気づいてはいなかった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加