第2章

6/32
前へ
/50ページ
次へ
ハヤトは傘を差して待ち合わせの場所に立っていた。 広告代理店でグラフィックデザイナーをしている彼は忙しい毎日を送っていた。クライアントからの要望があれば休日でも呼び出され、担当の仕事以外でも嫌な顔をさせず手を貸す彼に頼る同僚は増えていくばかり。 だがそれも会社の中での信用に繋がる。彼はいつの間にか会社の中で一目置かれる存在になっていた。 だが仕事が忙しくなれば彼自身の時間は削られていくのは必然で、彼女と会う時間は少なくなっていた。 デートの最中にも呼び出され、そのたび寂しそうな彼女を残して会社に戻るハヤト。待ち合わせの時間に行けることは稀でいつも待たせてばかり。 『ごめん、今日も行けなくなった』 そう彼女に伝えるたびにハヤトの胸も痛んだ。だがいつも彼女は 『分かった。仕事頑張ってね…』 そう言ってくれた。 彼女ためにも頑張らなきゃ… ハヤトはそう思って仕事に打ち込んできた。いつか自分が独立して、その隣にいる彼女と笑い合う毎日を夢見ていた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加