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『誰よりも俺を必要としていたのは君だったのに…』
ハヤトは暗くなった道路に浮かぶ外灯を見つめて言葉を漏らす。だがふっと笑った。
『違うな。君がじゃない、俺に君が必要だったんだ。もっと早く気付けば良かった…』
雨が外灯の輪郭を揺らしている。ハヤトが振り返ってソファーに戻るとテーブルには紅茶が置かれていた。
『ありがとう』
ハヤトは微笑みを浮かべて自分を見つめるリョウタに言うとカップを手に取った。一口飲むと体の中に温かさが沁み込んでいくようだった。
『そう言えば、リュウト今年は時間あるんだね。確か去年はスプリングコレクションの準備で慌ただしかったのに…』
『ああ…今年はいいんだ』
リュウトはそう言うと持っていたカップをテーブルに置いた。
『いいんだ…』
リュウトは自身の膝に肘をついて俯いた。その様子にハヤトが心配そうな視線を向ける。
『リュ…』
呼びかけようとしたハヤトの手首をリョウタが掴む。そして無言で首を振るリョウタにハヤトも黙って頷いた。
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