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リュウトは彼女と向かい合っていた。
話があると言われ事務所を出た二人は降り出した雨から逃れるように人気のないコンクリート造りの通路へと入り、そこで向かい合った。
『話って?』
リュウトが切り出すと彼女はじっと彼を見つめる。彼女の瞳は悲しさを浮かべているように見えて、リュウトは戸惑っていた。
『どうした?』
リュウトが彼女に優しく問いかける。だが彼女の口から出た言葉はリュウトの想像もしない言葉だった。
『もう、終わりにしたい…』
『…』
突然の別れの言葉に混乱するリュウト。
何故?そう聞きたいのに彼の口からは言葉が出てこなかった。
『あなたは私じゃなくても良かったんでしょ。あなたの周りを彩る華なら…きっと誰でも良かった…』
『…』
リュウトは何も言わない。そんな彼の様子を肯定と捉えたのか彼女は彼の横を通り過ぎていく。緩いウェーブのかかった彼女の髪がふわりと揺れていた。
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