第2章

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そんなある日、リュウトの女性関係にまつわる噂が広がり始める。それは二人の幸せを嫉むモデルたちが流していることをリュウトは知っていた。 だが騒げば彼女を巻き込むことになる。リュウトはその噂を否定も肯定もせず沈黙を守り続けた。リュウトは彼女が信じてくれればそれでいい。そう思っていたのだ。 恋愛ごとに不慣れな彼なりに彼女を愛してきた。だがリュウトは言葉が足りなかったのかもしれない。 彼女は言葉の少ないリュウトよりも、耳に届くことの多い噂の方を信じてしまった。そして自分を引き止めないことが、その答えだと思ったのだろう。 リュウトは唐突な別れに言葉が出なかっただけ。ひたむきに夢を追ってきた彼は愛し方を知らなかった。そして、去っていく愛の引き止め方さえも… 通路を出て空を見上げたリュウトの顔を雨が濡らしていく。 『俺は君になんて言えば良かったのかな…』 そう呟いた言葉はもう彼女に届くことはなかった。
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