第2章

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彼女がモデルの仕事をやめたことを知ったリュウトはその日からデザイン画を描かなくなった。いや、描くことができなくなった。 あれから一年が過ぎ、ようやく彼はまたデザインをするようになった。いつか彼女が自分のデザインした服を身に着けてくれるように… リュウトは来年のオータムコレクションに参加するための準備を進めていた。おそらく年明けから打ち合わせなどで忙しくなるだろう。だが今は、こうしてみんなで過ごす時間を大切にしたい。そう心から願っていた。 『そう言えば、リュウトもうすぐ誕生日だよね。去年は忙しくて祝えなかったから、今年はみんなでお祝いしようよ』 『いいね、俺ケーキ買ってくるよ。こんなでっかいの』 リョウタの提案にハヤトが声を上げて、それを見たリュウトの顔に笑顔が浮かぶ。 ただ一人、ユウタだけはその表情を曇らせていた。 『誕生日か…』 その言葉に他の誰も気付いてはいなかった。
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