第2章

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ばたんと響く扉の閉まる音がユウタに衝動的な怒りを湧き起こさせる。 『くっ!』 ユウタは持っていた花束を思い切り地面に叩きつけた。 ユウタはふらふらと建物の中へと入って行くと壁にもたれてしゃがみ込んだ。そして非常階段の方に目を向ける。さっきまでそこにいた二人の影を見つめるかのように… 不意に涙が込み上げた。 『戻れると思ってたのは…俺だけだったんだ…』 ユウタはそう言って顔を伏せた。彼の泣き声を隠すかのように雨の勢いは強くなっていった。 ユウタが顔を上げると足元にはバラバラになった花びらが吹き込む風に舞っていた。 彼女の好きな花。ユウタは花びらを一枚手に取った。 『こんなぴったりの花言葉はないよ』 彼女の言葉を思い出してユウタはそう呟いた。 『こんなに綺麗なのに、悲しい花言葉なの』 彼女は愛おしそうに白いチューリップの花束をその胸に抱きながら言った。 『「失われた愛」…』 ユウタは手の中の花びらをぎゅっと握りしめた。
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