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NYのとあるアパルトマン『Rainy Room』。日本人の老婦人が営むそのアパルトマンの住人は母国語を懐かしむ家主の趣向か全員が日本人だ。古いレンガ作りの三階建て。今は七人の青年が暮らしている。
世話好きな家主は面倒見がよく、住人達は彼女のことが大好きだ。彼女が振る舞う手料理に故郷を思い出す者は少なくない。
一階には談話室があり自然と人が集まってくる。夜になると皆がそこで笑い合っていた。
『あれ、アンナさんは?』
談話室に入って来た男がソファーに座っている男に問いかけた。
『おかえり、アラン。アンナさんは結婚式があるんだって。明日戻るって言ってたよ』
『なんだ。じゃ、何か食べて来れば良かったかな』
アランと呼ばれた男は鞄を置いてコートを脱ぐと
『リョウタ、何か作ってよ』
ソファーに座る男に笑いながら言った。
『じゃ、アランは食べないんだね?』
『何を?』
柔らかい笑顔を作ったリョウタがアランに視線を向ける。リョウタは少し口角を上げ、さっきとは違うイタズラっ子のような笑みを浮かべるとソファーの背もたれに腕を掛けた。
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