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「バレンタイン?」
「そう、バレンタイン、です」
やまぶきは自室で本を読んでいる。信田にもタスク少年にも読めない文字で書いてあるから、どうやらそれは異国語の本らしい。
タスク少年は信田の正面、ソファに座って今日のおやつである、チョコチップクッキーを食べている。
「明日なんですよ、それが」
信田はそこで意味ありげに言葉を切った。
「恋人同士が贈り物を交換したり、片思いの女性が男性にチョコを贈ったり、それが転じて女性からお世話になった男性に贈り物をしたり……そういう、想いを伝える日です」
「それは……よく分からないけど、ずいぶん楽しそうですね」
タスク少年は最後のクッキーを口に放り込んだ。
「ええ。楽しみです」
明日の食堂の仕込みのために、信田とタスク少年は部屋を出ていき、やまぶきは読んでいた本を机に置いた。
それからやまぶきはひとりで、すぐ近くにあるやまぶき専用の魔法実習室に向かう。
魔法実習室はそこそこの広さがある。いくつかの魔法を駆使して、やまぶきはそこにベルトコンベア式の巨大オーブンを設置した。
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