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むっと口をとがらせていると、ふと目の前が暗くなって、気づいた時には私の唇に翠くんの唇が触れて離れたあとだった。
「油断大敵……だよ?」
「――っ!」
確かにホームの端っこの方で、人は少ないとはいえちらほらいるのに。
ぶわーっと一気に身体が発熱する。
やり場のない感情に、してやったり、とにやにやしている翠くんをぽかり、と力の入らない拳で叩いてみた。
これが私の、精一杯の抵抗なのだ。
「あ、電車来た」
少し冷えていた手で頬の熱を冷ましていると、ホームに電車が滑り込んできた。
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