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≪‥‥‥で?
そのションベン臭せぇガキさぁ、
いつまでココに居ンの?
テメェの餌代も侭ならねェってぇのにョ…≫
<気に入らないンだったら拓が出てけよ。
此処は元々俺の根城なんだし‥>
≪チッ‥≫と舌打ちして、
拓はビールのアルミ缶を捻り潰した。
アパートに帰り着いてからというもの、
澪はずっと俺の背後に張り付いて、片時も俺から離れようとしない。
拓を警戒してか、声を掛けられても決して目を合わそうとはしなかった。
拓にはそれが益々面白くなかった。
≪クソガキ‥≫
拓は拗ねたようにテレビに向かって毒づいた。
<風呂湧いたけど‥ひとりで入れるか?>
〈‥‥‥〉
黙りこくって爪を噛み、澪の視線は空を漂うばかり。
<そぉ‥じゃ、しょうがない‥>
澪の服を脱がせ、抱き上げた。
埃と汗の混じる甘ったるい澪の匂いに、
心なしか胸高鳴る自分が妙に思えた。
浴室に入ってからも、澪はゼンマイの切れた人形のようで、いっこうに動く気配がない。
<次、ソッチの足‥‥痛くないか?
‥‥‥ッコラショと‥ココ掴まってな…
あ‥肘‥ちょっち‥擦りむいてンよ…
・・・・・
今度はシャンプーね‥‥‥コッチ向いてみ…
どぉ?‥熱くない?>
大の男が嬉々としてお人形ゴッコかよ‥フン‥
応えのない澪に向かっていちいち言葉をかける自分に笑える。
澪は俺の手でピカピカに磨きあげた。
まるで極上のビスクドールじゃないか?!
息をのむ、
抜けるように透明な白の肌…。
スモーキーアッシュの髪から滴る雫が、
珠になって素肌の上をキラキラ転がる。
やはり澪は、どこか遠い異国の血を継いでいるに違いなかった。
瞳は美しい灰褐色のガラス玉…
長い睫に水滴が伝い、人形は顔を歪めた。
<ほら、だから目を瞑れって言ったろ‥>
シャワーを充ててやると、
子犬のように首を振って俺の方を振り返り、
エヘヘ‥と笑った。
澪に漸く魂が還ってきた。
<フフ‥ヨーシ!
どーよ♪サッパリしたろ?
・・・・・・・・・・・
・・・・つか‥‥カワイイなぁ‥おまえ…>
俺は澪に手を添え、バスタブに迎え入れた。
狭いバスタブの中、
俺の膝の上で澪はタオルを弄んだ。
これ迄のことをボンヤリ思い返していると、
澪の手を離れたタオルが湯船をユラユラとたゆたうのに気づいた。
疲れてたンだな…
澪はウトウトと微睡んでいた。
<‥ットト…危ねっ‥‥溺れちまぅ‥>
抱き留めた澪の背中越しに、顔を仰向かせたその時…
≪えええぇ~なんかヤラしぃ~い‥♪≫
扉に凭れヘラヘラと此方を眺める拓がいた。
<‥ドア、閉めろよ…風邪ひくだろ‥>
≪ぉひょ~☆ナルホドねー!
男にしとくにゃもったいねぇ激マブッ☆
こいつぁ、クラブのアバズレなんかよか、
全然勃つってモンだゼ♪
ヘヘ‥もしかしてお前等、
ソーユーカンケーなワケ?(笑)≫
<用がねェなら出てけって!>
≪ヤったの?せっくすうぅ‥☆
お前がこのお嬢さんにブッ込むワケ?
アレ?逆?
あんな狭いトコ入んのかよ(笑)
なぁ、どーなんだよぉ‥真ぁォ‥≫
バッシャッ!!!☆
≪ぶわっ!★ばっ!!!
ナニしやがンっ‥‥ッテメェ‥!!≫
俺は拓の顔めがけ、バスタブの湯をおもいっきり浴びせ掛けた。
<ぁあ゛っ!?
ブッ込ンだがナンだって!?
オメーみてェなヤリチンと一緒にすンじゃネェよ‥クソがっ…!>
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