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〈…‥ヒッ‥ヒハッ‥ッ!!…カハッ!‥〉
<み‥澪‥?!!!>
俺の腕に懐かれ落ち着きを取り戻したかにみえた澪が、突如激しく身を捩り喘ぎ始めた!
何かの発作か‥!?
情けないにも程がある…
俺ときたら、只オロオロするばかりで、澪の背中をさすり声を掛けてやるのが精一杯だった。
退散しかけた拓は振り向き様にこちらへ駆け寄ると俺から澪を引き離し、そして叫んだ。
≪!!!よこせッ!!!
…過換気症候群‥過呼吸だ‥
真生!!!ナンか‥ふくろ‥
コンビニ袋でいいから持って来い!
!!!モタモタしてンじゃねェッ!!!≫
怒鳴りながらも、拓の手は素早く自分の着ているタンクを丸め、澪の口鼻を覆っていた。
≪‥怖くない‥怖くないよ澪‥落ちついて…
ゆっくり息を吐き出してみな…
今度は吸って…
ゆっくり‥‥ゆっくり‥‥吸って‥吐いて…
そぅ…上手いゾ‥澪…≫
‥‥*‥‥*‥‥*‥‥*‥‥
あえかな寝顔…。
疲れ果て‥
泣き濡れた儚い澪は、
乳飲み子のように俺に身を委ね
腕の中で小さな寝息をたてている。
身を挺し、俺を庇ってくれた澪…
澪は勇敢だった
…俺は‥もう、お前を離したくない‥‥。
離れたくない‥
‥‥‥‥なのに‥どうしようもないオレ‥‥
古びたレンガ造りのこのアパートは、
元々生糸を保管する倉庫だったそうだ。
先の震災にも耐え、時を経るごとに「加齢」していく様が美しい。
管理者が不明複雑なので、ろくに手入れされておらず、
塗装は剥げ落ち、下卑た落書きが留まらない。
窓を開ければ閉めるのに一苦労、
床板の隙間からは雑草が覗き這い出す。
住人達は各々勝手気ままに部屋を改造して
好き放題なのだ。
かといって居心地は決して悪くなかった。
夏はひんやりと、冬は暖かく、
居住スペースに比して高い天井が気に入っている。
室内外の雑音が抜け難く、好きな音楽は大音量で垂れ流せる。
しかし、港の汽笛の音だけは、何故か部屋の中にまで届いた。
夜更けの汽笛は、殊更‥物悲しく響く‥。
拓がこの部屋に住むようになって、スチール製の二段ベッドを設えた。
上段を俺、下段は拓が使っているが、
酒に酔った時など、拓はいつもオンボロのカウチソファに転がっていた。
シャワーの音が止み、
拓が濡れた髪を拭きながら俺たちのベッドに近付いた。
≪‥‥さっきは…ア~‥‥‥悪かった‥
‥‥酷いこと言って…≫
<?…珍し‥☆
拓が俺に謝るなんて、百年に一度くらい‥>
≪馬鹿言え!
…俺だって反省くらいするさ‥‥≫
<‥‥‥ありがとな…拓…>
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