第2章 拓と澪

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≪ヘッ‥やめてくれ、礼なんて。 オレのせいなんだから‥‥ そんなンよりコイツ、めっちゃイイ奴じゃん おまえの事イッチョマエに護ってくれちゃって‥‥‥泣かス‥ ‥フハハ‥ それにひきかえ、 俺サマの嫌われようったらねーワ☆ …昔サ… 俺達3人で仔猫拾って飼ってたろ‥‥で、指導員に見つかって棄てられそうになってさ、 普段はヘタレのおまえが、さっきのコイツみたく、すンげーイキったじゃん… そんなン‥思い出したゎ‥≫ 拓は苦笑いし、 雑然としたテーブルのLUCKY STRIKEに手を伸ばした。 眉根を寄せた神経質な面差しで柱に凭れ掛かり、ナニかを思いだしたようにフッと笑ったかと思うと、 また虚ろに煙草をくゆらせた。 程無く、拓はベッドに横たわる俺達をチラリと横目で流し見、 ≪…ア~ァ‥‥妬けるネ~… こんなカワイ子ちゃんが結局インポの真生にゾッコンかよ~≫ と、冗談めかした。 <💢インポは余計だろ! ・・・・・…でも‥ …目を覚ましたら、オレ‥フラれる… きっと拓のこと見直すよ… カッケーよ‥拓は‥。 俺は‥澪に何もしてやれなかった…> ≪‥‥慣れだし‥ 施設に来たばっかの頃なんて、 彩花、しょっちゅう発作起こして‥‥≫ 拓は独り言のように思い出を口にしながら、 静かに寝入る澪を覗き込んだ。 ≪‥‥‥お嬢さん綺麗だねぇ…オレとデートしない? …なんつって‥ウハハ‥≫ ぺシッ!!☆ <触ンなっ! 澪に手ェ出したらマジ、ブッ刺すっ❗️> ≪‥ッテ‥☆キレてんじゃねぇよ‥バ~カ≫ <ウルセー! 油断も隙も‥節操もねンだから‥拓は…> ≪‥‥‥‥惚れてンの?≫ 俺は拓の問い掛けに答えるのを躊躇った。 ≪このお嬢ちゃんサ、 ナンつーか‥‥普通じゃねンだろ?コッチ‥≫ 拓はそう云って自分のこめかみをつついた。 <‥ウン‥‥まぁ‥少し変わってるよ‥‥ だから‥尚更‥‥護ってやんないと… まったく… コイツときたらちっとも目が離せないんだよな…> ≪楽しそうだな、真生≫ <‥‥オレ… 澪が喜ぶことは、何だってしてやりたいよ コイツの泣きっ面見るとナンカスゲェ辛くて悲しくて苦しくなる… 笑ってるとさ、 超絶アガるしサイッコーに気持ちイイぜッ☆ なんか‥も‥ヘンになりそうなくらいシアワセ☆> ≪とっくにイカれてンじゃん? おまえ、 まーだコイツの面倒みる気でいンだ。 傲慢じゃねーの‥‥神様かよ…≫ <…なれない‥かナ‥‥‥家族…… ・・・ヶッ‥‥ヶ‥ッコン‥?‥‥的な… 養子縁組‥なんて‥‥‥あー‥‥ソーユー‥ …無理か‥ムリだよな、アハ‥澪は男だし… なんたってまだガキで…> <………なぁ真生… 世の中にはサ、棲み別けってもんが キッチリあるワケよ。 コッチゾーンの常識をアッチ側に説明したってわかんねぇべ? そンでアチラのやり方なんて通用しないのがコッチ側。 相入れない別々の世界ってことヨ≫ <…ぁぁ‥‥それがナニか‥?> ≪わっかんねーかなァ‥ 澪はアチラの人間ヨ? 健全な一般市民の皆さんの仲間…たぶん。 方や極道の使イッパで野良犬みてぇなその日暮らし。 籍書き変えたくらいで何がどう変わる? 澪に贅沢させてやれるワケでナイでしょーヨ。 それとも、アッチ方面がおまえらを熱烈歓迎、祝福してくださるっての? 権利だの制度なんてーのはな、アチラの勝手な条件付き縛りよ。 資格に審査?クソ食らえだ… おまえなんざ、お役所から門前払いくらうのが関の山だって話しヨ≫ <……> ≪ザ~ンネ~ン☆ 澪と寝たかったのになぁ~まお~≫ <…また‥‥ ‥‥‥‥‥‥ンだョ‥‥‥寝てますよ…ホラ> ≪バッカ‥も~‥ “結婚”っつったら“エッチ”だろ このお嬢ちゃん、簡単にヤらせてくれそうだもんな♪≫ <…いいかげんに‥‥っ!!!> ≪シッ‥澪が目を覚ます‥‥‥ 図星だろ? …けど真生は、頭ン中パンッパンで手が出せない? でもヤりたい‥ケドいけない‥∞ループ… ‥それ“惚れた”ってことじゃんよ。 だって…澪クン、エロ過ぎ~♪ 駄々漏れじゃん☆エロっ気 愛らしい天然、眩い美貌‥で、ガードユルユルとか‥ そんなンじゃさぁ、真生じゃなくたってお持ち帰りするっしょ。 類い稀なる逸材ョ?風俗もポルノもゼッテェほっとかないって!≫ <だからっ!俺がまもっ…> ≪護れンの?おまえに。 澪みたいなユルいヤツ騙すなんて雑作もネェ。 嘘クセェ‥どんな薄汚ねぇお情けだって、 コイツにとっちゃありがたい“支援”?“救済”“援助”なンだからな。 こんな処に居たら、すぐにクズ連中の餌食になってボロボロにされちまう。 澪はな、 善良な市民の皆さんに囲まれてアチラで暮らす方がシアワセなんだよ。 本気で惚れてンだったら、元に戻すんだな。 澪は諦めろ‥≫ <‥‥‥‥…> ≪やっぱ抱きたい?≫ <澪はそんなンじゃねーよ> ≪アラ?そぉ? オレがもし真生なら、抱くぜ? だって澪とチューしたいもん♪ 思い出づくりにたっぷり可愛がってあげたいモ~ン♪≫ <拓は誰だってお構い無しだもんなっ> ≪失敬だね、 ボクはかわいいコとしかイタシませんよ≫ <…ハハ‥ガキの頃からそぅ… …拓は俺の夢を片っ端にブッっ潰すのナ…> ‥‥澪は俺の夢…希望の光‥‥ 触れれば消える氷のカケラ… <…綺麗なガラスは…すぐに傷付く‥ たいせつに扱わないと… 澪には、辛いこととか‥悲しい思いをさせたくないんだ…絶対にさせられない。 この世で一番綺麗なモノだから。 だいじなものは‥慎重に…丁寧に… ‥‥で、ないと…> ≪…でないと?・・・バチでもアタる…≫ <ああ、そうだ 俺はバチが中って地獄行きだよ、 生きてないねっ! 澪は…澪は、 ・・・・・地上に舞い降りた・・・・・・ ・・・・・・俺の天使だ・・・・> 時間が止まった気がした。 俺が大真面目にこんなクサイ台詞を口にするのは、 心から本気でそう思うからで、 厨二病だからでも、カッコつける為でも、 ましてや笑かす為では絶対にない! しかしこんなときは大抵失笑をかうんだ。 そして必ず拓の悪ノリが始まる。 俺を茶化したりからかったりと大ハシャギだ。(しかして、オレの純情は羞恥心に葬られる‥) ところが、このときはナニかが違っていた。 いつまでも拓のふざけたツッコミは発動されず‥‥‥‥。 <‥‥‥拓、眠ってンの?> ≪‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥フフ… そうか‥‥それで‥‥‥しっくりきたヮ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥な、真生も…そう思う?≫ <え?な、なに…?> ≪だからサァ、天使!天使なんだって!!≫ 拓はボロソファを飛び越え、部屋の隅のガラクタの山から、一冊の古めかしい本を手にして戻ってきた。 重厚な装丁の、此処には不釣合なかなり上等の画集…拓は目当ての頁を徐に開いた。 ≪コレコレ! 回収してきた借金のカタ、 取り立てに駆り出された時に兄貴から駄賃がわりに貰ってンよ。 真生、この絵、見覚えあるだろ?> それは、 ガキの頃ふたりで見た 森の掲示板の“あの絵”だった。 ≪何気に捲ったらコイツが妙に気になって、連れてきてた(笑) 思い出したよ、 コイツだ!って☆ ・・・・すげェな・・・こんなこと・・・≫ <‥‥拓…> ≪あ゛あ゛あ゛あ゛!も゛ぉ゙ぉ゙ぉ゙!! スゲーよ‥たっまンねええええ‥ なんかも~トリハダッ いたのよ!現実にっ!三次元だぜ! マジかぁぁぁぁぁああああああ! 目の前にいるっ☆コレよ、コレッ!! な?! だからさ、オレの初恋‥‥ 澪をョ‥ コイツを‥こぉ‥ギュウウウッ☆ って‥‥おもいっきり抱き締めてさぁ‥ メッチャクチャにして身体中に塗ったくって ‥喰っちまって…こうっ‥‥ゥゥ… 俺ン中に全部染み込ませてぇぇぇっ!!! ああああぁぁ‥‥…ぜぇぇぇんぶっっっ☆≫ <‥ちょ‥‥タク‥‥‥> マジか…って、 こっちが言いたい… 拓、ナニ告白(コク)ってンだよ 拓も澪に? ホレ‥???!!!!! 半端者の俺たちが人並み(?)の恋愛とか しかも‥恋敵…? ‥‥笑わせる… ウソ‥ 大・大・大・大・大ショック… 夢なら醒めてくれ‥ど‥‥うか… <止めろっ!!黙れっ!!!黙れ!黙れ!!拓! きっっしょ‥キモッ!キモッキモッ‥ わあああ…きッショーいヤツーーーッ!! お芸術で‥‥『川島 澪』でっ☆ キマッってんじゃねーっ!変態!!! もー!早く寝ちまえバカっ!ど変態!! 拓のバカタレ!バカ!大馬鹿!エロ! ドエロ!!どスケベヤローーーーーッ! この間男っっっ!!!!! 消えろっ!消えちまえ!!!エロ拓ぅ‥(泣)≫
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