第1章 相棒

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俺は、澪を振り切って駆け出していた。 馬鹿な澪‥ たかがジュース一本… こんなチンピラに“恩”感じやがって…、 しかも100%の信頼を寄せて微笑みかける 無垢な澪が怖かった…。 このまま放っておく? そうさ‥ 俺は哀れな迷子にほんの少し同情し、 施しを与えてやっただけ……。 このままナニもなかったことにしてもバチはあたるまい‥ …待て、待てっ! ナニやってんだ!?オレ! 澪は此処が何処かすら解ってないはず… 澪はまた通行人を待ち、 ソイツがどんなイカれたヤツとも知らず、 幾度も幾度もそんな輩に情けを乞うのだろうか…。 俺は 立ち止まり、 恐る恐る後ろを振り返った。 街灯の下で澪がポツンとひとり佇んでいる。 為す術もなく呆然と立ち竦み、 胸に抱いたジュースの缶が傾いて足元にポタポタ零れ落ちていた。 澪は泣いていた…。 この残酷な男に打ち拉がれた哀れな自分を庇うかのように‥ 崩れそうな心と身体が砕け散ってしまわぬよう、 自分自身を固く抱き締め、 腕を噛み、漏れ出す嗚咽を押し殺す…。 喘ぎに似た抑えようのない慟哭を息も絶え絶えに‥ 堪え忍ぶ‥‥。 俺は澪の純真を無碍に踏みにじった…自意識過剰の臆病者。 甘く可憐な砂糖菓子の睡蓮は 涙の雨に打たれて跡形も無く散り失せる。
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