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放っては行けない!!!
俺は直ぐ様、澪に向かって叫んだ。
<何やってンだ!澪っ!
一緒に行くんだろ!!?
おいで!ほらっ、俺ンとこまで来いっ!!>
頑なだった澪の両腕がゆっくり解けた。
澪の手から空の缶が放れ、カラカラと高い音を響かせて転がった。
そして澪の身体は冷たいアスファルトに崩れ落ちた。
<澪ぉっ!!!>
ただ‥ただ‥自分の愚かさを悔やむしかなかった。
<澪‥澪‥目を開けてくれ!
ゴメン‥ごめんな‥‥意気地がなくて‥
オレ、なんかホント‥しょーもない男で…
だから悪いのはオレなんだ…赦してくれ‥
頼むから‥‥澪…!>
澪の唇がピクリと動いた。
<み‥みおっ、澪!!
あ‥ぁ…気がついた‥‥
ごめんよ‥‥澪…ホントに‥すまない‥‥>
〈…まぉ‥いっちゃぅ‥>
<‥行かない‥ほら、此処に‥居るから…>
澪はため息のような深呼吸をひとつついて、
にっこり微笑んだ。
<…よ、よかったァァ‥‥
はぁぁぁ‥
ほんと、超テンパったぁ~……ハハ‥ハ‥>
〈‥も‥‥つでてってくだたい…みぉも‥‥
‥‥‥‥ね…
みおもいっしょ?…ね?おねがい‥‥
つでてって‥おねが‥い‥〉
<バッ‥‥…もぉ‥‥‥‥
ッタリメェだろ!?
置いてくかよ‥ほんとにもぉぉお‥‥>
〈みお…ね‥なおすかだ‥‥
ばかのびょうき、なおす‥かだ‥‥
ね…だかだ、つでてって‥くだたい…〉
<おぅ、一緒に行くんだゾ‥
もう泣かなくていい…
今から俺んちに、わかるよな?
澪はバカじゃねンだもんな?>
あぁぁン‥ァン‥アァァン‥
安心したのか、澪は俺の胸に顔を埋めて、
赤ん坊のように泣いた。
澪の体温が久しく忘れかけていた懐かしいものを思い出させる。
なんだかこのままずっとこうしていたかった。
だが、次第に夜露を肌に感じ始め、澪の体調が気に掛かる。
俺自身も早いこと身体を休めたかった。
俺は澪を背負った。
<しっかりつかまってろよ>
〈‥はぃ…〉
こんな細っちい身体、路上で夜を明かすなんてとても無理だ。
<さ☆ほんじゃ帰るとするか!>
〈‥‥まぉの‥おうち‥〉
<ああ☆
狭いし、とっ散らかってるし…ちょっとメンドーな奴いるけど、
野宿するよりゃマシだろ?>
〈‥‥‥♪〉
俺の背中を抱く澪の体にきゅっと力がら入るのがわかった。
<緊張する?ハハハ‥ヘーキヘーキ☆
着いたら先ず風呂入ンねぇとなァー♪
お前の涙と鼻水でベットベトだぁ(笑)>
〈‥すち…まお‥だいすち…だいすち‥まお‥だいすち‥〉
何かの呪文か?
鼻歌?
澪は俺の背中で繰り返し呟いていた。
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