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男子高校生の私はその日、父親に靴を買ってもらった。
その靴を履いた時、なんか変わった感覚がした。
靴は普通の靴なのに何かが違う。
その時の私はまだこの靴の素晴らしさと怖さに気が付いてなかった。
父親から靴をもらってから一週間が経った。この一週間は履かないように前の靴を履いていた。雨の影響で汚れてしまうからだ。
そして初めて履いたこの日、私には素晴らしさに気が付かされた。
どういうわけか靴を履いたらワープするようだ。
その日は家から5m刻みを2 、3回ワープした。
日が経ち、その靴を使ったら体育測定時に短距離走でギネスになるはずの最速が出た。
それもそのはずだ。
スタート地点からゴール地点にまでワープしたのだから。
それがきっかけでリレーの選手に初めて選ばれた。
自分の足は普通並みの速さだから嬉しかった。
周りのクラスメイトが私を褒めた。
体育祭があと一週間もしない頃、父親に靴の秘密を聞かされた。
「ごめんな。その靴は実は友人から試作品としてもらったんだよ。だからあの時、買ってないんだ」
父親から重々しいその言葉が私の耳から響く。
「は?つまり販売してないのかよ、この靴。ふざけんな、俺はそんなことして体育祭に出たくねーよ」
私はそう言って二階の自分の部屋に行き、そのまま布団の中に入った。
頭の中で蘇る。
「お前がいればギネスも体育祭の勝利も夢じゃないな」とか言う友人達の言葉。
「ギネス審査の人たちが来る。俺の期待も裏切らないでくれよ」という先生の言葉。
その言葉たちが頭の中でぐるぐると回転する。
私は”ズルはいけない”というプライドを心に掲げて生活していた。父親のように金を騙して仕事をする大人になりたくなかったから。
でも販売されているから今回は許せると思った自分にも責任があった。
明日、起きたら謝ろうと思ってその日はそのまま眠りについた。
目が覚めた。
下に降りてリビングに行く。
「父さんは?」と母親に聞く。
「仕事よ。あんたも早く行きなさい」と母親に叱られた。
私はトースターで焼かれたパンにイチゴジャムを塗り食べた。そして身支度を済ませ、玄関に立つ。
普通の靴を履こうか悩むが、ワープ靴を履いた。
「行ってきます」と挨拶し、一歩踏み入れた時だった。
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