2回目『本落としの恋』

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私はいつもの図書館で小説を借りに来た。 本の選び方は作者で決めるわけではない。裏に書かれているあらすじから探すのである。しかも大きな本は借りないようにしている。どこでも読めるようにするためだ。 私は本を順次に眺めていく。 私の歩くところに本が落ちる。 「なんだ……?」 『本落とし』とタイトルが書かれた本である。裏表紙のあらすじからして恋愛小説のようだ。 本を置こうとしたら隙間から黒い前髪がぱっつんに切れた女の子の顔が見えた。 その子は恥ずかしそうにこちらを見る。 「何してるの?」と私は優しく聞く。 「べっ……別にあんたが好きそうな作品を見つけたわけじゃないんだから」と彼女は言う。 「ごめん。自分、恋愛小説読まないから……」 「待って……読んで欲しいの。あなたに合うストーリーだから。あっ……別に嫌ならいいのよ」とその子は言う。 なるほど、この子はもしやあれか。 「君はストーカーか?」 「いえ、その……ごめんなさい……」とその子は逃げ出してしまった。 本棚の端まで行きそこから見える彼女は黒いポニーテールの髪の毛を猫じゃらしのようにゆらゆら揺らして去っていくのだった。
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