問い

2/2
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「…コツ…コツ」 靴音が鳴り響く。 有り得ない。 俺が居る場所は、雲よりも高く、大気圏よりも低い、その中間。 つまりは俺は今、空を飛んでいる。 俺の能力は空を飛ぶ事だ。 機械なんて必要ない。 俺はスーツ一つで空を飛んでいる。 「…コツ…コツコツ」 さっきよりも靴音は近付いている。 俺は音速を越え、光と化した。 「コツコツコツコツ」 靴音はどこまでも付いてくる。 俺は空中で動きを止めると、振り返った。 「…誰だ、姿を現せ」 「後ろだ」 その声が脳に届いた瞬間、俺は激しい痛みと共に気を失った。 「…カチッカチッカチッカチッ…」 頭の中で、時計が時を刻むような音が木霊する。 失った意識が徐々に覚醒し始める。 「…起きたか?」 俺はこの声を覚えている。 俺をこんな目に合わせた張本人の声を忘れる訳はない。 「…お前は誰だ?俺に何の用事がある」 俺は飛び起き、辺りを見回した。 しかし、奴の姿が見えない。 これがこいつの能力なのか? 「…何故人類は、不思議な力を手に入れ始めたと思う?」 俺は辺りを警戒し、体勢を低く構えた。 「…何故、我々のような特別な力がある人間が産まれた?」 「姿を現せ!」 俺は声を張り上げ、逃げ道を探した。 「…お前も答えられないか…なら死ね」 その声が聞こえた瞬間、俺の脳内で鳴り響いていた時計の動きが止まった。 そして俺の心臓の鼓動も止まった。 俺はどうやら死んだようだ。 「…こいつも答えを知らなかったようだな」 その声と共に、一人の男が突如姿を現した。 「…また能力者を探すか」 男はそう言うと、煙のように姿を消した。 「…コツ…コツ」 この音を残して。 終わり
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!