彼女はリアルが得意ではない。

3/5
前へ
/31ページ
次へ
「あらあら。ならわたしの選択肢はとっても間違いですね。申し訳ないですけど、とりあえずこの体に悪そうな色をしたスイーツを食べ終わるまで待ってくださいね」 「どうぞごゆっくり食べてください」 ぱしゃ、と彼女がスマートフォンでスイーツの写真を撮る。かじられた天の川、と呟いているのを聞きながら、ホットコーヒーをすすった。 「……そういえば、聞いてなかったですけど、なんであたし告白されたんですか?」 「えぇっと……言ってませんでした?」 「えぇ。名前も知りません。年齢も、性別も、趣味も」 「天野浩。十九歳。男。趣味は音楽を聞くことです」 「あらあら、それでは天野さん。……いえ、彼氏ですから浩さんとお呼びするべきでしょうか」 「どうぞご自由に」 「それでは浩さんとお呼びしますね。あたしなりの精一杯の親愛の表現です。あたしの名前やらなんやらはご存知です?」 「残念ながら、いいえ、です」 「あら、あらあらあらあら」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加