時計は止まったときに1番価値がうまれる

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うぃぃぃぃん、と機械音は止まらない。 ふわぁー、としゃぼん玉が目の前をよぎった。ルルーが吹いてるのだろうか。宇宙の無重力でしゃぼん玉を作ると、地上より長持ちする。そんなことを私は今日、ルルーに教えた。だからたぶん、手を洗うための石鹸かなにかでしゃぼん玉を作っているのだろう。 と、きゃああああっ、というけたたましい叫び声がしたので、私はため息をついて宇宙船の壁やら床やらを蹴っ飛ばしてしゃぼん玉が流れてくる方に向かう。 「どうしたというの、ルルー」 「アイぃ……」 プラチナブロンドのうつくしい髪をゆったりと漂わせながら、ルルーが半泣きで私に振り向いた。ルルーのいたスペースはしゃぼん玉が無数にふわふわと漂って、ぱちん、ぱちん、と不規則に壊れていった。まるで天使みたいね、なんていうことを冗談で考える。 「わたしっ、わたしの時計が壊れちゃったぁ!」 どうして?というような意味のことを私は慣れない英語で問う。グローバル化が進んでイングリッシュを話せない人間なんていなくなったけど、日本の片隅でのんびりと生きてきた私にネイティブな発音は厳しい。
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